レーシックによる乱視
○ レーシックを受けたことが原因で乱視になる危険性
乱視とは、眼の屈折率が縦軸と横軸で異なっている場合や、角膜表面に凸凹が発生した場合などで網膜に正しい像を結べなくなっている状態を示します。(後者は不正乱視といいます)レーシックが原因で乱視が発生するのは次のようなケースです。
1 フラップの不具合による乱視の発生
レーシックは角膜の表面にある「角膜上皮」という部分をめくって「フラップ」というフタをつくり、角膜の実質層をレーザーで削って再びフラップをかぶせるという行程で手術が行われます。この際、フラップが元の位置にただしくかぶせられなかったり、シワやズレが生じてしまうと角膜の表面に凸凹が生じ、そのために不正乱視になってしまうという場合があります。
このケースの場合、再手術によってフラップの状態を正常にすることで問題は解決しますが、近年は手術機器の精度や性能が大幅に向上したため、めったにこの問題は発生しなくなっています。
2 コンタクトレンズによる角膜の変形
コンタクトレンズを長年着用している人は、コンタクトレンズの形状にあわせて角膜が変形している場合があります。そのため、レーシックを受ける際には医師の指示により、術前のしばらくの期間コンタクトレンズの着用を禁止されるはずです。
こうしてコンタクトレンズによる影響がなくなった状態の角膜のデータをとり、レーシックは行われるわけですが、患者さんが医師の指示を守らず、必要なだけの期間コンタクトから「角膜を休ませる」という手順を踏んでいないと、適応検査の際に間違った角膜のデータが採取されてしまい、その結果施術後の角膜に歪みが生じてしまう場合があります。
3 レーザーの照射位置のズレ
これも最近はめったに発生しなくなったトラブルですが、レーシックの手術中、患者さんが眼を動かしてしまうとレーザーの照射位置がズレたりブレたりして正しい矯正が行えず、不正乱視が発生することがあります。
現在のレーシックの主流では、高速サイクルで眼球の動きをトレースし、もし手術中に眼球が動いても正確に眼球の動きにあわせてレーザー照射角度を変化させ、安全に手術を終える技術(アイトラッキング・システム)が採用されています。
いずれの場合も再手術による角膜の再矯正で問題は解決しますが、1の「フラップの不具合による乱視の発生」の場合は純粋な手術ミスであり、角膜そのものを再加工しなくてもフラップだけに対する軽微な手術だけで対応できる可能性が高いです。
2の「コンタクトレンズによる角膜の変形」に関しては、医師の指示に従わなかった患者さん側に問題がある場合がほとんどですが、角膜が特に弱い人は医師に指示されたとおりの期間コンタクトレンズを装着しなくても、十分に角膜の形状が術前に回復しないケースがまれにあるようです。自分の角膜の厚さや強度についてはインフォームドコンセントやカウンセリングの段階で医師と十分話し合いましょう。またコンタクトレンズを装着していた期間の長短も角膜の形状変化の度合いに影響がある可能性があります。これらの状況についてもしっかり医師に伝えておきましょう。
3の「レーザーの照射位置のズレ」についてですが、現在日本でレーシックに用いられているレーザー機器は原則としてアイトラッキング・システムもしくはそれに準ずる安全装置が設置されているはずです。これは人間が眼を動かす速度を上回る検知速度でトレースを行いますし、突発的な事故などでトレースしきれないほどの動きが発生した場合は即座にレーザー照射を停止しますから、非常に安全性の高いシステムです。
いずれの原因にせよ、最悪の場合でも再手術によって乱視は矯正できますし、クリニックは再手術に耐えられない患者さんにはそもそもレーシックを勧めないはずです。
しかし、各クリニックによって手術後のアフターケアや再手術に関する対応は異なりますので、安全性や費用面を含め、初回のレーシック後のアフターケア体制はくれぐれも納得いくまでクリニックに確認しておいたほうがよいでしょう。