レーシックによる過剰矯正・矯正不足
○ レーシックの「本当に適正な矯正」とは?
一時期、レーシックを手がけるクリニックの間で「視力競争」が流行したことがあります。
一般に「視力」という言葉は、視力検査で測定される数値のことを示しますが、実はこの数値は5m離れた「遠見視力」のみを表し、読書の際などに重要な近見視力とは異なった数値が現れます。
レーシックを手がけるクリニックではキャッチフレーズ的に「視力1.x以上を保証」などという言葉を用いることがあるのですが、遠見視力だけが向上しても「眼の見え方全体」がよくなるとは限りません。近くと遠くの見え方のバランスこそが重要なのです。
こうした認識が不十分だと、遠見視力を高めることに重点をおいたレーシックが行われてしまい、結果として「矯正しすぎた」「矯正が不十分だった」という不満や不具合が発生します。
○ レーシックによる過矯正とは
レーシックで必要以上に角膜の屈折角度を変えてしまい、近視だった人が遠視になったり、遠視だった人が近視になったりする状態を「過矯正」といいます。またそこまでいかなくても、「度のきつすぎる眼鏡をかけた時」のようにめまいがしたり、吐き気や気分が悪くなるなどの副作用が発生するのも過矯正の可能性が高いでしょう。
○ レーシックによる矯正不足とは
「せっかくレーシックを受けたのに、思ったほど視力が向上しなかった」というのが矯正不足ですが、これは純粋に「矯正が不十分だった」というケースと、「もっと眼がよくなると思っていたのに」という患者さんの期待に応えられなかったケースに分かれます。
遠見視力の数値のみにこだわるなら、レーシックではほとんどの患者さんの視力を1.5程度まで引き上げることは可能です。しかし患者さんの眼の状態によっては、そこまで矯正してしまうと日常生活に不具合が生じたり、近くのものが極度に見えにくくなったりする可能性があるため医師が矯正を手控える場合もあります。こうした事情が患者さんによく伝わっていないと、適切な手術を受けたにも関わらず「矯正不足だ」という不満を抱える原因になってしまいます。
○ 過矯正・矯正不足の解消法
現在のレーシックは、原則として「再手術に耐えられる体質の人」以外にクリニックが施術を勧めることはありません。その場合はラセックやエピレーシックなど別の施術を紹介されると思います。ですから、単純な角膜の屈折率の再矯正は「再手術」という形で比較的簡単に行うことができます。しかし、なぜ過矯正や矯正不足が発生したのかという原因を究明し、医師と患者の双方が納得した上でないと、再手術をしてもまた別の不満が発生することになりかねません。レーシックは満足がいくまで無限に繰り返せるわけではないので、せいぜい手術は2回までにとどめたいものです。再手術に踏み切るには、くれぐれもカウンセリングとインフォームドコンセントを徹底してからにしましょう。
なお、過矯正や矯正不足はコンタクトレンズや眼鏡との併用で問題が解消する場合も少なくありません。あなたの眼のコンディションによっては、その方が便利で快適な場合も十分あり得ます。「裸眼で日常生活」にこだわり過ぎるのも時としてよくない場合があることを理解しておきましょう。